前編を読んでいただきありがとうございます。
海外に出たり、新しい業界に足を踏み入れると本当にまだまだ知らないことばかりだなと思いますよね。
今回はコーシャーのガチ層を、私の経験談やビジネス的視点も交えてお話ししたいと思います。
※前回に引き続き、私個人の見解も含まれるので実際にコーシャーの仕事を請け負われる方はご自身でさらに詳しく勉強してください。
レストランで出会うことはないコーシャーのガチ層
まず、コーシャーガチ層の方にはレストランでは会うことはありません。
なぜなら
ガチだからです。
※クロスコンタミネーションの観点からNGです。
なので、アメリカにはコーシャーガチ層のための専用のレストラン、スーパー、ケータリングサービスがあります。
2%に過ぎない少数派へ向けたニッチな商売!?
アメリカにおけるユダヤ系の人の割合は全体の2%ほどと言われています。
さらにガチ層となるとどんだけニッチな商売なんだと思ってしまいますが、
これが成立してしまうのはユダヤ人コミュニティの特異性があると思います。
多くの人がご存知のようにユダヤ人には迫害されてきた歴史があります。
有名なものでナチスドイツによる迫害。
それ以外にも中東や世界各地で迫害されてきた民族なんですね。
なぜ?
驚異的な民族だから(※個人的な見解です)
簡単に言うと優秀な人は妬まれるんです。
ユダヤ人のイメージは成功者が多く、お金持ち?
日本語でもユダヤ人に関する数々の書籍が出ているのでユダヤ人て成功している人が多く、お金持ちというイメージのある人は多いと思います。
その通りです。私がアメリカに来て知り合ったユダヤ人は
裕福な人が多くみんな何かしらビジネスをしています。
私のユダヤ人の友達曰く、成人してまず最初にやることは不動産投資らしいです。
お金に関する教育、ビジネスマインドはレベチです。
ガンガン仕事をし、とことん休む
私もいくつかのビジネスをユダヤ人パートナーとしていますが、
優秀であり、とてもエネルギッシュでもあり、ガンガン仕事をこなしてしっかり休むというイメージです。
休みの日には一切連絡取れなくなるほど極端にオンオフがあるなーという感じです。
優秀な上に独自の教育メソッドがあって人生を謳歌している。そこに迫害の歴史もあればそのコミュニティはより内側に強固になっていくものだと思います。
アメリカでは、
ユダヤ人界隈と良いコミュニティを築ければ成功できる
とも言われているほどです。
ニッチな商売でも成り立つのはユダヤ人に富裕層が多いという点とコミュニティに信用されればそこには強固な絆があるという点からだと思います。
コーシャーのケータリングをやってくれ!!!
私にはユダヤ人のお客様がたくさんいます。
ある時、その1人にこう言われました。
「友達の息子が13歳の誕生日でお祝いするんだがコーシャーの寿司ケータリングやってもらえないか?」
もちろんやるよ!
ケータリングの記事はこちら!
前後半に分かれています。
話しを聞いていくと高級ホテルの1フロアのスペースを貸し切った200人規模の盛大なパーティということでした。

依頼者「コーシャーのケータリングやったことある?」
ヤス「ケータリングはないけど、コーシャーが何かは知ってるから大丈夫だよ」
依頼者「そうか、なら大丈夫だな。当日はラフィがいるからその指示に従ってね」
そんな感じでサクッと終わって当日を迎えました。
ここでオチが分かった人はまずいないと思います。
このケータリングの依頼者と私の共通の知り合いで、最初に引き合わせてくれた人がラフィという人だったので、ラフィの指示に従ってと言われたと思ってたんですが、その依頼者はラビの指示に従ってと言っていたんですね。
- コーシャー専門の監督者のこと
- 調理する人が使用する器具、調味料から仕込み方法に至るまで細かくチェック
- コーシャーと認定できるかジャッジする人のこと
このラビがいるケータリングがガチ層のケータリングです。
前半で解説した3つの層を軽くおさらいすると
- ライトな層
- 厳しめ層
- ガチ層
※普段からガチ層の人はもちろん、普段はライト層でも大人数が集まる場やフォーマルな場ではラビを呼んで厳正なコーシャージャッジをする人も多いです。
初めて体験するラビのジャッジがあるコーシャーケータリング
この時が初めてのラビがいるガチコーシャー体験でした。
まず、コーシャー認証のある米や調味料しか使えません。
その調理工程もラビにジャッジしてもらう必要があります。

全てラビの目の前で仕込む必要があります。(袋を開けるところから)
魚は鱗が確認できないと使えません。
例えばサーモンのように誰もがサーモンと分かるものは鱗を処理した後の状態でも大丈夫なんですが、カンパチとかキンメとか彼らが一見検討のつかない魚は鱗付きで搬入しなければいけないんですね。
持ち込んだ炊飯器やまな板も調理器具も使えません。
唯一使えたのは包丁だけでした。
「それはあなたの商売道具だから」と。そこにはリスペクトあるんですね。そのかわりコーシャーにする儀式をさせてくれと。

「ん?なんだろ?怖いな…」
ジャー… 熱湯を数回かけられて終わり。
それでいいのね。それなら他のものもそれで使わしてもらいたいけどなーなんて思いつつパーティーまでに急いで準備しなければいけませんでした。
幸い、依頼者から「念のため早く行ってね」と言われていたこともあり、なんかこちらも嫌な予感がしたので大分余裕をもって行っていたので従業員数人で分担して、1人はレストランに戻り鱗がまだついている状態の魚に差し替え、1人はコーシャーマークのある米や調味料を調達し、私はコーシャーの調理器具を借りに行ったりなどしてなんとか対応することができました。
この後もこの人達の紹介で何度もラビのいるケータリングをすることがありました。
そこで感じたのはラビによっても厳密さが違うということ。
先程も言った、魚の鱗に関しても自己申告性で良い人もいればしっかり鱗を見させてくれと言う人もいます。
厳しいラビは、調理に参戦!!!
厳しい人だと、
炊飯器のボタンを押すのはラビがやる
炙りの寿司をバーナーで炙るのはラビがやる(でも結局できなかったので私がやって、すごく近くで確認するに変わりました)
※本来、それらも調理工程とするなら、なるべく厳しくチェックするのがラビの役割でもあるんですね。
一旦ラビがコーシャーと認めたものは神に認められた神聖な食べ物になるんですね。
アレルギー対応とは違い、ここでの相違が科学的に人体に影響を及ぼすことはないでしょう。しかし、信仰とはとても尊いものだと実感させられました。全てが信頼関係のもとに成り立っているんですね。そこに真摯に向き合うことで信頼関係を構築でき新しいビジネスチャンスが生まれるんですね。
コーシャーは単なる宗教ルールと片付けるべきではありません。
信頼関係を築ければ大きなビジネスチャンスになります。
めんどくさいに隠された大いなるビジネスチャンス
多くの人は「大変そう…」と思うでしょう。
これがチャンスになる理由です。
人がやりたくないことには需要があるんです。
実際に
ガチコーシャーに対応できる寿司職人は圧倒的に少ない
やる人が少ないのでケータリングの単価は高く、リピーターになりやすい。
信頼関係を築くこと横の繋がりで仕事が増える
「コーシャー対応可」と明記するだけで差別化できる
- 専用を謳う場合、ラビの認証が必要
- 何かしらの登録やらが必要
- コーシャー以外のケータリングはできない。
上記の条件を満たすと
毎回ラビのジャッジは必要ではなくなり依頼者側の負担やストレスは減る。
コミュニティには入っていきやすくなります。
マイアミでも何人もコーシャー専用で
ケータリングビジネスをしている人を知っています。寿司ではありません。
コーシャーのお客様が求めているのは、ただ「美味しい料理」ではなく、
もっとも大切な信仰に合った“安心して楽しめる食体験”なんですね。
その価値を提供できるなら、これは確実にビジネスチャンスになります。
文化理解が価値を生む時代へ
まとめます。
大切なキーワードは
文化理解が価値を生む時代へ
世界では寿司を上手に早く握れるだけでは足りません。
新しい価値観を受け入れビジネスチャンスへ結びつけることが大事です。
新しい世界に興味を持つ、相手が何を求めているのか想像して寄り添うこと。
相手の文化を尊重しながらサービスを提供できる人材は、必ず求められます。
もしあなたが、世界で寿司で勝負したいなら
この“知らなかった文化”が、あなただけの武器になるかもしれません。
寿司は美味しいんです。
日本の先人が生み出し改良されていった世界に誇るべき素晴らしい食文化です。
【寿司x世界の文化】このマリアージュが新たなビジネスチャンスを生み続けています。