今回はコーシャーについて私の実体験に基づいて記事にしたいと思います。
前半で「Kosher(コーシャー)」の基本知識を、
後半で私が実際に体験したKosherのケータリング対応や、ユダヤ人コミュニティとの関わり、そこに広がるビジネスチャンスについて紹介します。
(Kosher)コーシャーってご存知ですか?
みなさんは(Kosher)コーシャーってご存知ですか?
ほとんどの日本人には馴染みのない言葉だと思います。
アメリカではごく一般的な言葉で、
特に飲食業界にいる人で知らない人はいないと言っても過言ではないかもしれません。
簡単に言うと、
ユダヤ教の食事ルール
ことをいいます。
アメリカでは、特にニューヨークやマイアミ、ロサンゼルスといった都市にコーシャー文化が根付いています。
スーパーマーケットには、ユダヤ教の認証マーク(○K、OUなど)の付いた食品が並び、
コーシャー専用のスーパーまで存在します。
ニューヨークで働き始めた当初、カウンターのお客様に「Kosher」と言われて
ちんぷんかんぷんで周りのスタッフに聞いて初めて知った時のことは未だに覚えています。
「まだまだ知らないことたくさんあるんだな」と。
もう少し詳しく解説します。
- 「食べてもよいもの」と「食べてはいけないもの」を区別したもの
- そして「食べて良いもの」をコーシャーと呼びます。
ユダヤ教を信仰する人にとって日々の生活に深く根付いた信仰と習慣の一部です。
コーシャーの基本ルール
- ウロコのある魚
- 特殊な屠殺のみによる牛肉、羊、鳥肉
- 野菜、穀物、ナッツ類、果物
- その他加工される物に関してはその製造過程を厳しく管理されて加工されたもののみがコーシャーの食品として認められます
食べてはいけはいもの
- エビ、カニなどの甲殻類や貝類
- ウロコの無い魚(穴子、太刀魚、アンコウなど)
- 豚、ウサギ
ちなみにアルコールはokです。
コーシャーの人達はお酒ガンガン飲みます。
この「食べてよいもの」「食べてはいけないもの」という基本ルールの他に細かいルールもたくさんあります。
肉と乳製品は一緒に食べてはいけない
例えば肉と乳製品は一緒に食べてはいけない
→ ハンバーガーにチーズを入れるのはNG。

調理器具や皿も分ける必要がある
あとは調理器具や皿も分ける必要がある。
肉用、魚用、乳製品葉とそれぞれ分なければいけません。
コーシャーの目的と背景
コーシャーは「清浄なものだけを食べる」という宗教的な教義に基づいています。
これはアレルギーや健康志向ではなく、信仰とアイデンティティを守る手段です。
コーシャーを守ることで、自分たちが神と契約を結んだ民であることを日々意識し、信仰心を行動に表す役割を果たしています。
実際どうなの?現場での対応は?
しかし!実際どうなの?現場での対応は?を踏み込んで解説します。
※あくまでも実体験に基づいた私個人の見解です。
まず、現場で対応しているといくつかのレベル差を感じます。
- ライトな層
- 厳しめ層
- ガチ層
寿司屋に「私kosherね」と来店する人はライトな層が多い印象です。
本来のルールでは「食べてはいけないもの」を扱ったまな板や包丁を使って調理した本来「食べてもいいもの」は食べてはいけないんです。
レストランでのアレルギーの方への対応もそうなんですが「クロスコンタミネーション」という観点からNGです。間接的に汚染されているからです。
クロスコンタミネーション 交差汚染
交差汚染とは、食材や調理器具、手指などを介して、細菌やアレルゲンなどの有害物質が別の食品に移ってしまうこと
しかし、ライトな層は「大変だろうから大丈夫よ」「ウロコのある魚だけにしてくれたら大丈夫よ」といった感じです。
14人のおまかせ vs たった1人の職人 ― 地獄のオペレーションは突然に

しかし、独立前にマイアミでヘッドシェフとして働いていたころの話しですが、
カウンターに14人のおまかせのお客様を迎えました。
2人ずつ7組です。
2時間後に次の予約が入っていました。
その日、急な欠勤がありカウンターで握れるのは私1人。
寿司屋としてある程度経験のある人なら…
この状況、地獄だなと理解してもらえると思います。
ちなみにカウンターでフルコースを1人で回すとしたら8人くらいがマックスです。
そこに14人です。
でも予約受けてるのでやるしか無いんです。
事前にかなり仕込んで万全の準備はしました。いざお客様を迎えました。
うち1名、厳しめ層のkosherを含んでいた
そこであるカップルの男性客が「kosherね」さらっと。
まじか?!
事前に聞いてなかったので焦る。
しかし、顔には出せないのでその焦りを押し殺し「ok」と。
まー、ネタ差し替えるだけだからいけるかと冷静になる
しかし、「あ、まな板も包丁も変えてね。あと、俺の握る時は毎回しっかり手を洗ってね」
とその男性客が続けて言ってきました。
たまにいる厳しめ層のkosherだったんですね。

「いやいや、それは無理だろ」(内心です)
実際それをすると他のお客様への提供スピードもさらに落ちる。
ここは事前に聞いて無かったし、話しをつけて今回はお引き取りいただくかとも考えたが、揉める可能性もあるしそれでさらにタイムロスするかもしれないと。
腹をくくり「Yes」と答えました。
ただ、オペレーション上毎回手を洗ったりするのは難しいので、
あなたにだけある程度まとまって出させて欲しいとお願いしたところそれは快くokでした。
なんとなく、ライトな層の感覚に慣れていた中でくらった衝撃
忘れられないkosherに対応した体験でした。
しかし、その後その人は常連さんになってくれました。
後半では私が体験したガチ層のkosherケータリングのいくつかを紹介しながらビジネスチャンスの観点からもkosher、ユダヤ人コミュニティについて話したいと思います。
